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現在国内では、後継者不足で、墓石の加工が出来る技術者は、殆どいなくなりました。
インド加工も少なくなり、ベトナム加工の技術がまだまだの状況で、墓石の加工は、中国に依存せざるを得ない状況です。
中国での石材製品の加工が始まってからすでに30年近い年月が経ちますが、中国も経済的に裕福な国になりました。
人々の生活水準も高くなった近年においては、中国の若者の多くが日本と同様、デスクの前での仕事を望むようになってきました。
そうなってくると、若い世代で職人のなり手がなくなり、ベテラン職人の引退で中国工場の人材確保が深刻になって来ています。
ここ数年の中国工場でも、技術力にある職人不足で、工場を渡り歩く非常勤の職人が登場しているくらいです。
上の画像にもありますが、政府からの指導で、従業員の健康管理の為に、大型の換気扇を取り付けなくてはなりません!
下の画像には、石を加工した時に出る下水を、浄化して流す装置も義務づけられています。
つまり、従業員の作業環境が良くて、高給を支払うことが出来る工場には腕の良い行員が集まってきますが、そういった工場で製品をつくるとなると、当然製作にかかるコストが高くなるのです。
弊社が取り引きをしている、中国・福建省の大手石材加工工場の行員の賃金は、10000元(約26万円位)です。
中国の大卒初任給の平均月収が約8000元(約19万円位)ですからかなり高給です。
ただ塵肺で胸の病になることが多く高給でもしかたないです。
もちろん、こんなに高賃金の工場ばかりではありません!
もっと安い賃金の工場もありますが、技術レベルは低くなります。
安い原石を使っていたり、素人目に見ても、明らかにその違いがわかることがあります。
国内加工と中国加工の違いは、同じ工場でつくられる墓石あっても、工場に支払う加工料金によって加工精度に差があります。
使用する石材、職人の熟練度、加工や検品の仕様が違うからです。
国内加工と中国加工で、最も違っているのが、検査の基準です。
中国人と日本人では「これでいいか?これはダメだ!」の妥協点が違うからです。
とにかく彼らは日本で霊園を見たことがありません!
取引先の工場も、検品員を日本に渡航させることで、意識改革をしてくれています。
当社もこれを埋めるために、検品のための定期的な渡航と仕様の明確化、厳重な検査を幾重にも行うことで対応しています。
完成の建組み画像も送ってくれますので、大変便利になりましたが、直接訪問して伝える事以上に有効な手段は、現在でもありません!
直接目で見て、触れてみて、彼らに触れてもらって、「これは良い!これは良くない!」を伝えて先方もこちらの基準を理解してくれるのです。
画像でも確認は出来ますが、完成度は触れてみて、初めてどれくらい丁寧に加工してあるかを感じることが出来ます。
完成度を伝えるには、言葉で伝えるより、肌感覚で伝える事の方が有効なのです。
「信頼できる取引先なので大丈夫!」なんて、日本的な考え方は外国人には通じません!1年経ったら大半の従業員が変わってしまう国なのです。何もしないで中間マージンだけ取っているブローカーのセリフです。
料亭ではお客様にお出しする料理の味付けをする板長が必ずいます。
優れた板長は、お客様を見ただけで、お出しする料理や味付けを決めるとさえ言われます。
だから、いつ行っても美味しい料理が楽しめるのです。
もちろん熟練の技術者が、常駐で指導し続ける訳には行きません!
その代わりに、検品員を日本に呼んで、霊園で墓石の良し悪しを伝えるようにしています。
国が違い、言葉も違いますが、伝え続ければ、必ずいい墓石が出来ます。
コストばかりを要求して、ゴマカシをさせているのは日本の石材商社です。
誰だってお金儲けの為に労働している訳ですから!
全体の加工賃が上がり、いい墓石を加工するために、更に手間をかけてくれる工場には、それ相応の工賃を支払は無ければなりません。
高額の工賃を払ってつくると言っても、日本でつくることを考えたら安くいい墓石ができます。
問題はとにかく安くつくりたいというお客様が多いことです。
注文を取りたい石材店は消費者から見積り依頼を受けているお墓の案件を、今度はその石材店が取り引きのある複数の石材商社に見積もりを依頼します。
石材商社同士での相見積もりになるのです。
石材店は、何とかして消費者から契約が欲しい!
石材商社も何とかして石材店から注文が欲しい!
安くつくるためにそれなりのランクの石材を使い、加工工場も本来の墓石工場ではなく、墓石の加工をしていない外柵工場で加工させたり、最近では床材などをつくっている建築工場で加工してコストを抑え始めています。
墓石を加工した経験が無い職人に加工させるわけですから、大衆食堂に懐石料理をつくらせているような物です。
これでは、いい墓石が出来るはずもありません!
これだけ永く墓石の加工をしているのですから、過っての国内の職人に勝るとも劣らない技術者は沢山います。
現実に日本の墓石職人を視察に案内した時に「なぜ、あのスピードであの精度で加工できるんだ」とうならせた職人もいたぐらいです。
いちがいに中国の加工が悪いというわけでは無く、そうさせている日本の石材商社の事情があるのです。
技術のある工場にそれなりの対価を払って仕様と厳重な検品で臨めば、いい墓石が出来上がります。
日本でつくっても、中国でつくっても、どこの工場でどんな管理でつくるかです。
「加工賃」と「技術」は、正比例というのは日本も中国も同じです。
中国で加工・製作された墓石を以前のような安価で購入できる時代は終わりました。
それでも国内加工に比べれば断然安いです。
国内加工でそれなりの職人さんに加工してもらうにはお金のある方しかつくれません。
それなりの職人さんとは、名工と呼ばれる一握りの方の事です。
時々加工するだけの未熟な日本の職人に比べたら、毎日加工をしている中国の職人の方が上手いでしょう。
現在中国政府は、環境問題に手を付け、工場排水はもちろん従業員の安全管理、空調設備の無い工場は、強制的に取り壊しになっています。
発展する沿岸部から内陸部に、工場の移転は進みつつあります。
発展する沿岸部の採掘場は、閉山になりつつありますので、石種もドンドン変わっています。
中国工場の原石のリスクも少なくなってきていますので、これまで以上に良い石材探しが難しくなって来ました。
安さを求める消費者と人件費や工場投資で加工賃が上がって行く中国と、どう折り合いをつけて行くのかが、今後更に大きな課題になって来ます。
2020年11月2日
新型コロナウイルスが、世界中でパンデミックを起こしている現在。
中国でも日本からの発注が止まっているだけで無く、国内向けの生産も落ち込んでいます。
石材加工の中心地泉州市の崇武でも、今年に入ってから廃業した工場も、十数社に上る情報があります。工場への出勤時には厳しい検査もされていて、生産能力も落ちて来ていますので、今後加工料の値上げをせざるをえない状況も考えられます。
現状では、海を渡っての検品が出来ない情勢です。
その為、オンラインでの検品員との連絡や画像確認、国内検品の強化が必要になっています。
インドでも、州を超えての物資の移動に規制がかかっていて、貿易港を変えての石材の輸出になっています。
その為、インド材が入りにくくなっていますので、在庫の確認が必要です。
上質な石から加工して行きますから、残り少ない石材は危険です。
在庫が豊富で、潤沢に動いている石材が安心です。
2021年2月19日
中国の春節が昨日までです。実質の稼働は週が明けた月曜日位からだと思います。
仕事始めの挨拶の連絡が来始めました。
中国も帰省を自粛させていますが、それでも帰省して仕事に帰ってくる人が増えてくる頃です。
中国材もインド材も潤沢に入っていませんので、在庫が減ってしまっています。
需要と供給のバランスで、値上げの連絡が来ています。
それよりも良質な石で、丁寧な加工が出来るのが何時になるのかです。
例年の事ながら、人件費の値上げで、ジリジリ加工賃が上がってきていますが、今年の特徴としては、石材ごとに値上げの幅が違ってきています。
例えばアーバングレーが5%位の値上げなのに、インド銀河が9%上がったりしています。
全ての工場から石材プライスの連絡が来ていませんが、工場在庫の有る無しで、その都度、時価のように変動して行くのかもしれません!上海辺りの建材として、インド材が抑えられている情報もあり、在庫の確認を続けながらの仕事になります。
2021年10月
中国では石炭不足から、深刻な電力事情です。
工場では計画停電に対応する為に、自家発電で対応しています。
電力会社とは大幅な値上げで合意をしていますので、石の加工価格も大幅な値上げになっています。
コンテナ不足で物流費が上がり、今回の値上げを含めて、輸入コストがかなり上がって来ています。
コロナウイルスの影響で、輸入出来ない石種も多く、在庫の無い石種が増えてきました。
円安の影響も、若干出て来ています。2022年の春節明けには、更に値上げの可能性もあり、墓石の販売代金にも影響が出てくるでしょう。
2022年5月
コロナウイルスオミクロン株の影響は、中国全土に広がり、福建省泉州市も例外では無くなりました。
港、道路、工場でロックダウンが行われています。
納期が不安定なだけでなく、急激な円安で墓石業界は、大きなアゲインストに見舞われています。
仕入れコストの高騰と安売り競争で、石質の低下やゴマカシ加工には、今まで以上の注意が必要になって来ました。