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一生に一度のお墓づくりなら、いいものをつくりたい!
そう思われている方は多いことでしょう。
故人の事を想い浮かべて、「出来る事なら、日本の石を日本の職人さんにつくって欲しいのだけれども、どれ位するものですか?」とご相談されるお客様は多いです。
ここで障害になるのは、石材店に日本の石を国内加工でつくってほしいと伝えると、法外な見積りを出されることでは無いでしょうか?
国産でつくりたいのなら予算は有りそうだ!国産なら最低これ位は儲けたい!
チャンスなので、儲け損なわない様に、国産の良さを売りこもう!と考えるでしょう。
みなさん国産の墓石は高い、いい物は高い、安い物は品質が悪いと思い込んでいませんか?
「中国産なら安く作れますが、日本の石と比べると、すぐに変わってしまいますからね~!」なんて、言ってきます。
販売店にこの不安に付け込まれて、法外な金額でおつくりになったお話をよく伺います。
不安を植え付けるのは、マインドコントロールのテクニックです。
国内加工だからと言って、石種、デザイン、石材店を選ぶことで相場より安く作ることは可能です。
ここでは、国内加工のメリットと、いい墓石を少しでも安くつくる方法についてお話いたします。
高額になっても、国内加工することの価値は、日本の石を日本で加工して欲しいという想いです。
人生観などで、お墓を外国人に触らせるなんて、理屈抜きに嫌だ!
生前、故人に日本の石でと言われている!
日本に拘りたい方、故人の故郷で採れた石にこだわれる方等、皆さんそれぞれに想いがあってのことだろうと思いますので、ここでは中国材、インド材をはじめとする海外の石の事と、海外加工の事は外してお話しします。
高くても日本でつくったら、中国でつくるより遥かにいい墓石ができるとお考えになる方が多いのではないでしょうか?
国内加工をすることの最大のメリットとしては、個別の石に精通し、性質を知り尽くした職人さんに、石目通し(天目取り)天目取り等の卓越した技術で、加工をお願いすることができることです。
中国でも良い工場に、一方方向でお願いすれば、仕様書通りにカットしてくれます。
その意味では、天目取りも出来る訳ですが、日本の職人さんは、加工する石を絞り込んでいます。
香川県の庵治石、愛媛県の大島石等、個別の石を専門に扱う職人さんがいるのです。
その石の性質を知り尽くした職人さんがつくる墓石は、幅広く石種を扱っている職人がつくる墓石と比べてみるとやはり違いがあります。
もちろん加工賃も違いますが、国内でつくるのであれば、加工証明を付けてもらうといいでしょう。
産地証明、加工証明、販売証明が付くことが、国内加工の安心なのです。
インド材のアーバングレーやインド銀河などは、例外的に吸水率が低いですが、白系からグレー系の石は、日本の石でも水を吸います。
天目取りをしてもらうことで、水を吸い込んでも抜けて行く様につくることができる職人さんの技術は、永く石の美しさを保つ事が出来ます。
技術もさることながら、墓石を完成させる時の妥協点の高さが全く違います。
海外加工に比べて、僅かな傷でも取り替える国内加工は、留まりが悪く(石のロスが多い)納期が長くかかります。
妥協点が高いので、削っていておかしな部分が出てきたら、最初からつくり直すのが国内加工です。
石の性質は分かっていても、削ってみないと分から無いのが石の難しさです。
お店に展示してある墓石は、そのお店の職人が加工していると思っていらっしゃるお客様も少なくありません!
墓石の加工が出来るのは海外か?一握りの国内加工工場になりました。
みなさんが専門家だと思っている石材店の殆どは、販売店になのです。
今日では、国内加工された日本の石が、お店に展示してある事もほとんどなくなりました。
置いてあるとすれば、余程国内加工を推奨されているお店でしょうね!
「私がつくります!」
「私が建てます!」
その説明を聞いただけで、その石材店がつくってくれると勘違いしていませんか?
まだ一握りの職人さんが国内加工をしておいでですが、日本の石だけでも何十もあり、全ての石材に精通している訳ではありません。
真壁石(茨城県)、庵治石(香川県)、天山石(佐賀県)等、専門的にその石を加工している職人さんがいるのです。
庵治石を専門的に扱っている職人さんに真壁石をお願いしても、加工は出来ても、真壁石を知り尽くした真壁の職人さんの様には出来ません!
その逆も同じです。
石は自然の物なのです。
その石、その石には専門の職人さんがいるんです。
例えば、現代の様に専門的に細分化された医療を受ける時、大きな病院では、総合診療科のような、どこで診てもらえば良いのかを診療してくれるところがあります。
整形外科にも四肢、関節、筋肉、脊髄等の専門的に診断してくれる先生がいるからです。
医師免許を持っている訳ですから、それなりの知識をお持ちでも、整形の先生に胃のレントゲン写真を見せても、消化器科の先生を紹介される様に、特別優れた知識や技術には専門の方がいる訳です。
国内加工する意味は、石を知り尽くした匠の墓石職人に作ってもらうから価値があります。
大工さんなら宮大工さんにつくってもらう様なものです。
これはもの凄い技術だなと感じる日本の職人さんも存じ上げていますが、墓石を原石から完成品までつくれる方が、今国内に何人おいでになるでしょうか?
防塵マスクをしていても、塵肺で健康に障害が出てくるような仕事で後継者が育ちません!
ほとんどの方がヤクモノと呼ばれる複雑な加工は、ヤクモノ屋さんという専門職人さんのいる会社に外注しています。
墓石の加工の大半が海外に移って、加工は出来ても仕事量が少なくて、滅多に加工していない日本の職人さんと毎日加工している中国の職人さんを比べた場合、私は中国の職人さんのレベルが低いとは感じません。
本当に一握りになってしまいましたが、日本人で卓越した技術をお持ちの職人さんが、凄すぎるだけです。
この画像は、蓮華を加工していますが、リズムに合わせて見る見る製品が出来上がって行きます。
この観音様は、加工が複雑ですが、日本でお願いしたら何百万の加工賃です。
なぜなら加工できる方が、殆どいないからです。
ここまでのコメントを読まれると海外びいきに聞こえますが、高額になっても国内加工をするメリットを分かって頂きたかったからです。
技術のある職人さんにお願いされれば、私たち石材業界の人間が見ても、ため息が出るような墓石に仕上げて頂けます。
今お話ししているのは、名工といわれる人の話です。
国内加工でも、未熟な研修生がつくるのでは意味はありません!
さて、みなさんが、一番お知りになりたい安くつくる方法ですが。
墓石の売り値は、原石の原価、加工代金、物流費、施工代金、販売店の利益です。
原石の原価は、産地や石のランクで違います。
日本の石は、海外の石に比べて希少価値や、採掘の人件費がかかる為に若干高額です。
最初に石目や色、性質で気にいった石種をご検討されて、デザイン、大きさ(石材使用量)に合わせて、ご予算のご検討の時に、ランクや石種の変更をされても良い部分です。
石でダマサレナイための基礎知識(国産材類似編)をご参考にしてください。
次に加工代金ですが、国内加工最大のメリットであり、原価に大きく影響してくる部分です。
国内加工で加工料が海外と大きく違うのが、カクモノとヤクモノの違いです。
カクモノは、直線的な加工で、長方形にカットして磨く事を加工の中心にした墓石のことです。
ヤクモノは、丸い加工で、この加工をすると加工料金が大変かかります。
花立てのカクモノとヤクモノです。
水鉢のカクモノ、ヤクモノです。
墓石の水平加工(カクモノ)、切り出し亀腹(ヤクモノ)です。
スリン
蓮華
銀杏面加工(特殊加工)
です。
加工に手間のかかるヤクモノは、花立ての左右を加工するだけでも10万位の加工賃の違いが出てきます。
デザインよりも、とにかく日本で加工して欲しい方は、カクモノでおつくりになれば、難しい加工のデザインをご希望の場合と比べて、20万、30万、時には数十万の加工賃の違いが出てきます。
ヤクモノのデザインをカクモノに変更して、見積もりが変わらなかったら、信用できないお店です。
墓石の原価に関係なく、このお客さんからは、幾ら儲けるという金額が決めていて、更に儲けようとしているからです。
もう一つは磨きです。
墓石の内側(カロート部分)等の見えない部分の磨きをしないだけでも金額が大きく違います。
香炉の内側は覘けば見えますが見えにくい部分です。この内側を磨かないだけで数万円違ったらいかがでしょうか?
「そんなに違うなら、目立たない箇所だし・・?」と考える方も多いですね!
一般的にですが、香炉の内側が磨いてなかったら、国内加工、湯飲みの内側もピカピカなら多分中国加工です。
香炉の内側です。
中国では今のところ無料で加工してきます。
石材の採掘を専門としているのが山石屋さんですが、ここに近いと物流費が節約できます。
加工をしている採掘会社もありますが、多くは加工専門の工場へ出荷されます。
石種を絞り込んで加工している石材工場は、取引の金額も大きく安く仕入する事が出来ます。
産地に近い石材店や同じ石を専門に扱っている石材工場は、物流費を抑える事が出来ます。
海外の加工賃がアップしてきていますので、ご説明したカクモノでおつくりになれば原石を海外に運び、加工して輸入する海上運賃コストや保険代、輸入経費を考えると、国内加工と原価的には同じくらいで出来ます。
さて施工代金や石材店の利益です。
一つは、墓石の販売数が減った今日、国産材で国内加工のご希望なら予算も多いだろうから、ここは一つ儲けさせて貰いたいので、取れるだけ取ってやれと高く売りつけられるケースがあります。
怖い事のもう一つは、紹介者が間に居るために中間マージンが大きくなって、石材店は利幅を減らしたくないので、お願いしたい職人さんに加工されないで、墓石が出来上がってしまう事です。
お客様が加工の違いを分かればいいのですが、残念ながらそれは無いでしょう。
国内加工には加工証明が付きますが、これもコピーや偽造の印がありますので、絶対ではありません!(証明書には、産地証明、加工証明、販売証明が記載されています)
日本の石な場合、特級、一級、二級等の等級が付けられていますが、採掘業者毎に、最も綺麗な石を特級として販売していますので、特級が幾つもあって、あまり当てになる物ではありません!
加工してもらう会社や、職人さんのお薦めされる石で、おつくりになるのも方法です。
加工される職人さんは、責任がありますので、石の等級にかかわらず、おかしな石は選ばれないものです。
私も、名工といわれる人にお願いする時は、頻繁に取引のある石材店の紹介で、仕事をお願いします。
いつもお願いしている石材店で無いと、中々仕事を受けては貰えないからです。
国内加工である事だけに拘りのお客様には、カクモノ加工がお薦めです。
直線や平面を削る機材、磨く機材は、中国で使用されている機械に比べて、国内で使用されている機材の方が正確で、磨きも丁寧にしてもらえます。
日本の石の種類によっては、カクモノ加工なら、海上運賃や保険料、通関費用を考えると、安く出来る場合も出てきました。