引導 (いんどう)
「引導」というのは、元々中国で古くから使われていた言葉で、「手引きする」「案内する」というような意味があります。
仏典を漢訳するとき、サンスクリット語 parikarsana の訳語に、この「引導」を選んだのです。「法華経」では、人々を導いて仏道に入らせる意味で使われています。
後に、死者の葬儀の時、導師が、棺の前で、法語や仏教の教えの詩を語って、死者を、迷界から浄土へと導くよう試みる儀式のことになります。
これを、「引導を渡す」と言います。
「迷界から浄土へ導く」とは、死者に、「死んだ事実」を確実に認識させ、現世への執着を棄て、悟りの仏道へと進むよう説くことです。
つまり、「あなたは、死にました」ということを、死者に宣言する儀式にもなります。
死の不可逆性を悟って、始めて、浄土への道も開かれるからです。
最初に、こういう「引導を渡す」という形の儀式をしたのは、中国黄檗集の祖、黄檗希運です。