「研磨せずに、400番でバフなのですよ!メッチャクチャ手抜きです!」
今日は、 若干マニアックですが、 墓石のバフ仕上げについて説明をします。
前回、友人の石材店副社長を中国に連れて行きました。
私は検品と新規取引先、本物のクンナムの仕入れライン確保が目的でしたので、彼が希望した安くつくってくれる工場へは、同行しませんでした。
帰りの飛行機の中で、彼の口数が少なくなっていたのは感じていたのですが、私の方は一定の収穫があったので、ビールを飲みまくって、意気揚々と返って来ました。
帰国後、私もバタバタ飛び回っていましたので、ゆっくり話せずにいました。
彼が久しぶりに岐阜の事務所に訪ねてきました。
私の顔をみるなり「思いっきり手抜きです!殆ど研磨せずに、400番でバフですよ!それで自慢されちゃいましたよ!」と、 少し興奮気味に 言い始めました。
呆れたのか?不満なのか?多分帰国後に、 中国の貿易公司から連絡があった仕入れ値が、気にいらなかったでしょうね!
聞きなれない言葉ですが、バフというのは、墓石の表面を磨いた後に熱をかけて、艶出しをする工程の事です。
バフの登場で、研磨の時間が飛躍的に短縮されていますが、石を傷めるのが難点です。
墓石の研磨は、50番、100番、200番 、400番、800番 と荒い磨きから、細かい磨きに番手を上げて行きます。
面倒な工程ですが、繰り返して行く事で、磨きの甘い部分を無くしながら、石の凹凸を無くして行きます。
砥石での磨きは、大量の水を使用しながら研磨して行きますから、石を傷めません。
石の表面の剥離を防ぎ、焼けて白濁化する事を抑えることが出来て、永い間艶が保たれます。
当社の場合は、日本の石で2000番、黒御影で3000番を基準にご希望があれば、5000番研磨をかけています。
丁寧にここまで磨けば研磨だけで艶出しが出来るのですが、安くつくらせると磨かずに、バフで艶出しをしてしまいます。
バフの作業風景です。
湯気が出ているのが分かりますか?
バフの機材です。
熱と水の量をコントロールしながら、絶妙のテクニックで、艶を出して行きます。
水を少なくして高熱をかける訳ですから、 研磨してなくても、とりあえず艶は出ます。
出来上がった時には艶がありますが、所詮は手抜きですから、瞬く間に艶がおちてきます。
砥石での磨きを売りにして、高額な販売をするのもどうかと思いますが、 安く売りたくても、 ある程度磨いてから、艶出しをして欲しい物です。
400番でバフなんて、無理!無理!艶を出すわけですから、私たちが見ると表面が剥離と言うか?特に硬い石の場合に、細かい破片が跳んでいるのを感じることがあるのです。
完成してから、発色剤という名のコーティングをしてしまうと、分からなくなってしまいますが、 磨いたように見せかけているだけで、 研磨に時間をかけていないと言う事です。
コーティングなんてドンドン落ちてきますから、早く艶も無くなって来ます。
霊園にお墓を観に行くと、墓石にはまだ艶があるのに、外柵(境界の石)の艶が無くなって、薄っすらと白くなっていることがありますが、これは安くつくるために、磨いてないからです。
現在では、墓石本体も安くつくるために、磨いていない墓石が増えました。
石材店の考え方しだいですが、お客様の想いはそんな短い期間でしょうか?
私は クレームにならなくても、一年や二年で艶落ちしてしまうのは嫌なので、私は磨いてもらっています。
勝手な思い込みかもしれませんが、お客さんの気持ちを考えて、石屋は誠意を尽くすだけです。
磨いたって才辺り5ドル位高くなるだけです。 (才は30×30×30位の立方体の石材使用量の単位です)
尺角の和型墓石で、20才位ですから100ドル位で1万1千円位、8寸の和型なら10才で5千5百円ぐらいの違いです。
それ位なら、 会社の企業努力で出来る範囲です。
彼が面白くなかったのが、今回400番までの研磨で、バフをかけられて自慢されたばかりでは無く、小さ端材を繋ぎつなぎ、左右が少しぐらい対象でなくてもヘッチャラの現場を見て来て、中国の石材商社を通すと、仕入の金額が思ったほど安く無かったので 「そこまでやってこれだけか?」と思ったのでしょうね!
ただ石材商社を通さないと、看板が上がって入るような正規の工場では無いので、不良品をつくりまくって、突然居なくなることもあります。
リスクが大き過ぎるので、安く売っている会社は商社を通しているはずです。
初めて中国に行って、黒く油塗している現場は、刺激が強すぎたかもしれません!
彼には「そんな事、当たり前じゃないか! 同じ墓石がつくれるのなら、私がそこでつくっているよ!私の会社は、安く売っている様に感じるかもしれないが、質を求めて中国の工場と直接取引をした結果として、仕入が抑えることが出来ただけで、質は譲っていないよ!なりふり構わず安く売っている石材店に、価格は及ばないかもしれないけど、同じ墓石じゃないからね!貴方が参入したい安売りというのは、値段だけの勝負だから、加工も含めた全ての工程で、コストカットしないと安売り合戦で負けるよ!自分の目で 観てきた墓石の加工に抵抗があるなら、違うスタイルの商売を考えた方がいいよ!」といいました。
激安商品は、石や加工だけで安くしているのでは無く、石材使用量を削り、施工の工程やコンクリート、鉄筋、コーナー金具、ボンド等を削って原価を落としている事は、説明してあったのですがね!
実際に自分の目で現実を見ると、若干安くなるぐらいでは、面白く無かったのでしょうね!
経年変化が早い位なら壊れる訳では無いので、磨いてなくても値段は安ければ仕方が無いのかとも想いますが、それだけで安くなっている訳では無いのです。
安くつくることいい事ですが、変えて良くなるものと、変えて悪くなるものがあると思います。
変えなくてはいけないのは、企業努力もしないで、儲けようとする体質では無いでしょうか?
ただ多額の利益を確保するために、手あたり次第の手抜きは、何年も経たないうちに、修理が必要になりますので、どうかな?とは思います。
石材店の言い値で墓石が売れて、儲かって仕方が無かった時の利益体質のままに、儲けようとするから、どうしても墓石の質が落ちて来てしまいます。
安くつくって高く売るのが商売の鉄則ですが、それは同じ商品を企業努力で安くつくって、付加価値を付けて高く売ると言う事では無いでしょうか?
誰だって会社を維持しなくてはなりませんから、利益が欲しいのは分かります。
でも物づくりよりも売る事だけを優先させて、駆け引きの為のお墓づくりはしたくは無いですね。
私の場合、特に拘っているのが、納骨室なのです。
納骨室(カロート)だけは、磨いた石で堅牢に綺麗につくってあげたい!その為にかかる費用の1万円や2万円の僅かな費用で、相見積もりに負けても構わない!磨かれた石棺の美しさを知っているから、私自身がコンクリートの中で安置されたくないと想うからです。
駆け引きして他社を出し抜きたい!利益も確保したい!なんて事をいつまでも続けていたら、質を譲り続けて行くしかありません!どんなに頑張って手抜きをしても、質を落とすにも限界があります。
残念ながら「大手だって当たり前の様にやっています。もっと安いからこの位は仕方が無いです」なんて、「この位」という逃げ言葉を使うのが、当たり前になっているのを感じます。
お客さんに駆け引きされて、セコイ手抜きの積み重ねで、ドンドン墓石づくりを譲り続ける位なら、墓石の構造も、加工も、施工も説明して、 正面切って値段を出して、質で競えばドンドンいいお墓が作れます。
手抜き無しでおつくりをしている 当社の価格表はこちらです。
を参考にされてください。
追伸
しばらくブログをお休みにして、申し訳ございませんでした。
連日の暑さの中、職人さんだけにお願いするのは申し訳ないので、遅れ気味の施工の立ち合いをしていました。
真っ黒クロスケで人相が変わってしまいました。
ホテルに帰ってもバテバテで、キーボードに向かう気力がありませんでした。
お盆の期間中は施工を遠慮していますので、少し体力が回復したのでブログを書いています。
またボヤキまくってしまいました。ごめんなさい!